THE GREATEST LOVE ALL(訳詞)
半生を振り返るこのブログを書き始めてから、思い出が詰まった段ボール箱を開ける楽しみが増えました。断捨離が面倒だったのか、引っ越しのとき無造作に放り込んだ箱もあり、若かりし頃の写真よりずっと価値があるお宝が見つかるのです。
何より懐かしいのは、作詞家時代の原稿や譜面を詰め込んだ箱。その中にホイットニー・ヒューストンの”THE GRATEST LOVE OF ALL”に日本語の歌詞をはめこんだスコアがありました。編曲家の前田憲男さんがメロディを聴き取って起こした音符が並んでいます。
手書きのスコアからボーカル部分だけを抜き出し、写譜屋さんが書いたのが下の譜面。おたまじゃくしの下に一つひとつ書き込んだ拙い文字が私の訳詞になります。東急がスポンサーの全国コンサートで、森山良子さんと八神純子さんがデュエットできるように作った作品です。
ネットで「THE GRATEST LOVE OF ALL 歌詞」と検索すれば、英語の歌詞(作詞家:Michael Masser, Linda Creed)と訳詞がいろいろ見つかると思います。ただし一般的な訳詞とは対訳であって、歌えるように書いた日本語詞ではありません。
歌うために訳すには超圧縮技術が必要。英語は1つの音符に1単語をはめられますが、日本語で歌うには、1音符に1文字しか入れられないから難しいのです。
例えば” I Love You”は3つの音符に収まりますよね。でも「あなたを愛してる」と歌うには9つの音符が必要。なので主人公が男性か女性かを考え、「好きさ」または「好きよ」と3つの文字に圧縮するわけです。可能なかぎり縮めて英語の歌詞に近い内容で入れこめる策は、世界観を五七五に凝縮した俳句に似ていると思います。
訳詞には作詞家が自分なりにストーリーを作った意訳もありますが、なるべくオリジナルの歌詞に近づけないとマナーを逸します。今回見つけた訳詞原稿とスコアの束は、自分の人間としての成長記録でもあると思い、照れくさいながらもホイットニーの歌に合わせて何度も口ずさんでみました。作詞家業に真剣に取り組んで続けていたら、もっと適切な詞を付けただろうと悔やみつつ、一度きりの人生を痛切に感じています。
THE GREATEST LOVE ALL
いつでも子どもたちは 未来を夢見てる
あどけないその笑顔を 見るたび
ふと思い出すの 私たちの幼いあのころ
ステキな王子様を 少女は待ちこがれてた
だけどそれはおとぎ話の できごと
そう 大人になった いまは
ころんで泣いても ひとりで起きることを
いつか覚えた 誰にも頼らず
自分の力で 歩くこのよろこび
それが GRATEST LOVE OF ALL
胸のなかに いま 息づいている
あたらしい夢
THE GRATEST LOVE OF ALL
傷ついても 自分らしく生きる
一度きりの人生
いつでも子どもたちは 未来を夢見てる
あどけないその笑顔を 見るたび
ふと思い出すの 私たちの幼いあのころ
ころんで泣いても ひとりで起きることを
いつか覚えた 誰にも頼らず
自分の力で 歩くこのよろこび
それが GRATEST LOVE OF ALL
胸のなかに いま 息づいている
あたらしい夢
THE GRATEST LOVE OF ALL
傷ついても 自分らしく生きる
一度きりの人生
どんな夢でも 捨てなければ
こころの空に 輝き続ける
©Copyright 織田ゆり子
-
前の記事
セレブ育ちのオジサマから卒業して実家に引越し 2019.05.28
-
次の記事
サヨナラを決めた彼の部屋から持ち帰ったお泊りセット 2019.06.03