はじめましてぼうけん

行った覚えのない駅が時どき夢のなかに出てきます。切符を買おうとして路線図を見上げてるのですが、どう乗り継げば自分の家に帰れるのか、途方に暮れている夢なのです。

時間帯は、帰宅する人たちが改札口から出てくる夕方。駅に続く商店街では「安いよ、安いよ」の声が響き、買い物かごを下げた主婦が今夜のおかずの材料を探しています。

今から初めて乗る電車で遠くに向かう私は、今晩中に家に辿り着けるのかと不安でいっぱい。暗くなっていく窓の外を眺めながら駅名を一つひとつ確かめて、知っている名前の駅が見つかったとたんに目が覚める。そして「ああ、良かった、自分の家にいる」とホッとして二度寝します。いろんな土地に移り住んだときの心細さから誘発された夢なんでしょう。

 

 

私はこれまでに15回も引越しをして、そのたびに新しい土地でブルーになりました。歩いている人たちは家族同士、友人同士、仲睦まじいのに、私だけがひとりぼっち。この疎外感を乗り越えるには顔見知りを作るしかないのですが、ドキドキしながら声をかけるまでが大変なのです。ましてや経験値の浅い子どもにとっては、いじめられるんじゃないかとか、迷子になるんじゃないかとか不安だらけ。でも勇気を出して一歩踏み出した先には、心の背丈が伸びた僕、私がいます。

 

NHK教育TV「ワンツーどん」に書き下ろした「はじめましてぼうけん」は、「おかあさんといっしょ」でも流れました。小学生の男の子が一人で初めて長距離列車に乗り、おばあちゃんが住んでいる海辺の田舎町まで旅をする話です。

この歌の元になった経験は「帰宅願望とは家でなくて愛するものに帰りたい郷愁」に書きましたが、東京から愛媛県の西条市まで列車とフェリーを乗り継いで行った思い出話。親元を離れた場所で芽生えた帰宅願望が今でも夢になって出てくるのかもしれません。あのころ住んでいた家も、愛媛のおばちゃんの家も既にありませんが、夢の中で帰りたい場所のひとつです。

 

「はじめましてぼうけん」

ポッケにきっぷを にぎりしめて
あかないまどから 手をふった
おばあちゃんのいなかへ はじめましてぼうけん
ひとりだってへいきさ だっておとなたもん ぼくは
ホームでみおくる パパとママが
せなかにきえたら けしきがにじんだ

おうちもみどりも とんでいくよ
しらないなまえの えきこえて
おばあちゃんのいなかへ はじめましてぼうけん
ひとりだってへいきさ だっておとなたもん ぼくは
ちゃんとついたら げんきですと
ともだちみんなに えはがきだすんだ

おばあちゃんのいなかへ はじめましてぼうけん
ドアがあいてよんでる あのなつかしい におい
きょねんもあそんだ なつのうみが
おおきくなったと むかえてくれたよ

©Copyright 織田ゆり子

 

Youtubeからジュニアコーラスティンカーベルさんのバージョンをお借りしました。第17回垂水声楽アンサンブルコンクール・小学生低学年の部で金賞と神戸市長賞を受賞されたそうです。