いじめっ子、いじめられっ子のキックベースボール

教室

中学校から大学まで、私はずっと私立の女子校に通っていた。でも小学校だけは公立の男女共学。思い出深い片瀬小学校は1学年3クラスで、さほど人数は多くなかったのに、クラスメイトの名前はほとんど忘れてしまった。それでも顔つきまで鮮明に覚えている子が2人いる。   ドラえもんのスネ夫みたいに、小賢しくてイジメっ子の頂点にいたKくん。勉強は苦手だけど、スポーツが万能で女子のリーダー格だったSさん。そ […]

ひみつだった近道と原っぱで道草した放課後

二宮金次郎

昔はどこの小学校にもあった二宮金次郎の像が「歩きスマホ」を連想させるとして、今は撤廃される傾向にあるという。1年生の3学期、私が横浜市の神橋小学校から藤沢市の片瀬小学校に転校してきたとき、校門を入って最初に目に留まったのは、ジャングルジムの脇にある二宮金次郎像だった。ランドセルではなく薪を背負って、本を読みながら歩く少年がなぜ校庭に飾られているのか。彼が日本を代表する思想家だと知ったのは歴史の授業 […]

江ノ電の警笛が聞こえる2DKの小さな窓から

松

神奈川県藤沢市片瀬。江の島に近く、どの庭にも松の木が生えているこの地域は、私の子ども時代が凝縮された場所だ。いっぱい遊んで、いっぱい泣いて笑って、小学校1年の3学期から中学生の終わりまでを過ごした。   日産の営業マンで業績を上げた父は、いつもお世話になっている大企業の重役から家を借りることになった。タウンハウスと呼ぶのだろうか、一戸建ての家が半分ずつに仕切られたアパートみたいな借家だ。 […]

こっちとそっち|小学校の入学式で一目惚れがバレた記念写真

私の父はとんでもない女好きで、15年前に脳卒中で倒れたときには8人の愛人がいた。女癖の悪さがいつから始まったかは、祖母に言わせれば「いったい誰に似たんだろうね?」。家系にはいないタイプだったそうだ。ルックスと頭脳が良く、営業トークも上手なおかげで、20代にして銀行の支店長になれたのだけど、家庭運は薄い人だった。母は結婚した相手を間違えたと気付いたときには、もうお腹の中に私がいて、次からこの男の子孫 […]

間抜けな寸借詐欺師のおいしい置き土産

引き戸

幼稚園時代を過ごした六角橋の借家は十字路の角にあり、今思えば泥棒が入りやすそうな隙だらけの家だった。留守番をする祖母と私はいつも茶の間から往来を眺めていたけれど、向こうからもこちらが丸見え。働きづくめだった父母の帰りは夜遅いので、年寄りと子どもしか住んでいない不用心な家に見えたことだろう。愛媛の穏やかな地から引越してきた私たちには分からない都会の盲点だ。   ある晩、玄関の引き戸がガラガ […]

路面電車と六角橋の雛祭り|木目込み人形の兄弟姉妹たち

横浜市電

今はミュージアムでしか見られないベージュ色の路面電車。横浜市電という一両の電車に乗って、私は祖母と一緒によく高島屋まで行ったものだ。 『ALWAYS 三丁目の夕日』のように、つつましやかな暮らしだったけれど、デパートに行くというイベントは我が家のハレの日だった。車掌さんが紐を引っ張ってチンチンと慣らすベルの音に、心を弾ませて10分ほどの旅を楽しんだ。   愛媛県から東京に夜逃げしてきた私 […]

またあそぼ|迷子になって初めてブランコを漕げた徳島の森

大家族で住んでいた小松の家を夜逃げする前に、3歳のころ、徳島に住んでいたことがある。銀行員だった父の転勤で引越したと思うのだが、どんな形の家だったか、どれくらい住んでいたかの記憶は薄く、思い出すのはイヤなことばかりだ。   当時の私はワガママすぎる幼児で、欲しいものがあれば手に入れずにはいられなかった。人形を買って欲しかったのに、きっとそれは高価だったのか、母は「絵本にしなさい」と勝手に […]

引越しブルーの原点 生まれた場所へのひとり旅

夏空

8月のある朝、私は愛媛県の松山駅を始発に新居浜駅へ向かう中距離バスに乗っていた。路面電車が走る市街地の一般道から松山自動車道に入ったころにはすっかり汗もひいて、エアコンの効いた車内では数組の客が聞き覚えのある方言で談笑している。窓枠に頬杖をついて夏空を見上げると、美術館の水彩画のように爽やかな青と真っ白な雲が、涼しげに伴走してくれることで目が和んだ。   四国に来たのは、小学生のとき叔父 […]

赤いやねの家

赤いやねの家

でんしゃのまどから 見える赤い屋根は 小さいころぼくが すんでたあの家 にわにうめた柿のたね 大きくなったかな クレヨンのらくがきは まだかべにあるかな 今は どんなひとが すんでるあの家 せのびして見ても ある日赤いやねは かくれてしまったよ ビルのうらがわに いつかいつかぼくだって 大人になるけど ひみつだったちか道 はらっぱはあるかな ずっと心の中 赤いやねの家 ©Copyright 織田ゆ […]

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